レキオ島唄アッチャー

南島に現れる仮面、仮装の神々、なぜ顔を隠すのか

 なぜ異形の神々は顔を隠すのか
 「来訪神:仮面・仮装の神々」をユネスコ無形文化遺産登録に提案しているということは、これらの祭祀がとても重要な民俗行事であることを示している。私が興味を持ったのも、本来、豊作や厄払いなど人々の願いをかなえてくれる神々なら、沖縄のミルク神や仏像の弥勒菩薩のようなふくふくしい顔を思い浮かべる。だが、これまで見てきた南島はじめ各地に現れる仮面・仮装の神々は、その多くは恐ろし気な形相である。その特異な形相にはどんな意味が込められているのだろうか。

 また、これらの神々は仮面や仮装という共通項はあるけれど、それらの異形の神は、たまたまそれぞれ独自に生まれたのか、それとも一部であってもなんらか影響を及ぼした関係があるのか、ないのかなど、もっと深く知りたいという思いがわいてくる。
なぜ神々は仮面をつけ、仮装するのかについて、外間守善氏は論文「異形の神の顔かくしの論理」で次のような考察をしている。
 
 <なぜ神々は顔をかくすのだろうか、ということについて考えてみたい。
 日本本土の来訪神は正月に現われ、南島の来訪神は節祭(旧暦7月で南島の正月)に現われるが、そのことについて下野敏見は、稲作中心の生活サイクルの組み立て方、神祭りのし方、来訪神の迎え方に拠るのであろう、というような推論をしているが、卓見であると思う。
 異形の来訪神は、恐ろしい仮面の様相から悪神にされている地方もあるが、その役割の本質は稲作豊穣の感謝、予祝であり、村や人々に平和、幸福をもたらす有難い来訪神なのである。>

 異形の来訪神の役割の本質は「稲作豊穣の感謝、予祝」であり、「村や人々に平和、幸福をもたらす有難い来訪神」だとする。
民俗学的には「来訪神と祖霊神を二分立する考え方」もあるが、「本来的には祖霊神も来訪神だったわけであり、深層でのつな がり、根は同一だった」、沖縄の祖先神アマミクも「そのもとは来訪神だからである」とする。
      悪石島ボゼ、鹿児島県観光サイト 
           悪石島のボゼ(「鹿児島県観光サイト」HP)
 「では、来訪神であれ、祖霊神であれ、異形なさまで出現する神々は、なぜ顔をかくし、風体をやつしているのであろうか」と本題に入る。
 <私は、その理由を二つに分けて考えている。その一つは、聖なる神と俗なる人との分別であると思う。異界からやってきた神の尊厳を維持するために、顔かくしの仮面をし、草装をすることで、形にみえる区別をしたのがまず一つに理由だと思う。異界の神と現世の人とは、そういう形で厳然と区別されたわけである。>
 
 仮面や仮装によって「異界の神と現世の人」を「厳然と区別」する意味があるとする。現世の人とあまり変わらない姿では、現世を超越した神らしい神聖さを感じないからだろうか。
  外間氏は、もう一つに理由として、民俗学者の折口信夫が、「『やつす』ということは、もとは、神祭り、寺の法会に参列する人は、禁欲生活にはいりげっそりと衰える。その後に人格が転換して神聖なるものになる」との解説を引用しながら、次のようにのべている。

 <古くは、身を「やつす」ことで人格が神格に成り変わっており、…「やつす」という語は、みすぼらしい、みにくい姿をやつして(仮装して)おのが姿をよりよくみせようとすることから、「やつす」そのものが、おめかしをするという意味に変わってきていることがわかる。>
 沖縄本島本部町伊野波のシヌグに伝わる来訪神ムックジャーがみすぼらしい姿に「やつし」て出現してきたことをはじめ、各地の来訪神が顔に黒い泥を塗ったり、赤や黒の面、面に赤と黒の配色による条紋をほどこしてることなどは「やはり一種のいろどりであり、『やつし』だとみられないだろうか」と指摘する。

 「『やつす』は、まさに、おめかしの原初的な姿であったことになる。少なくとも、おめかしをするという美学の原理は、『やつす』という語にかかわっていたわけであり、異形の神々の顔かくしの意味の一つがほどけてきたようである」との見解をのべている。
 外間氏は、「みにくい姿をやつして(仮装して)おのが姿をよりよくみせ」、「やつす」ことで「人格が転換して神聖なるものになる」とみる。
 来訪神、仮面・仮装の神々が、顔を隠すのは、そこに深い意味が込められている。お互いの影響関係は分からないが、こうした神々を生みだされた背景には、それぞれの地域で、そこに生きてきた人々の長い暮らしの営み、歴史がある。
  こういう神々の祭祀が、ユネスコ無形文化遺産として登録されれば、改めて大きな注目を集めるだろう。貴重な民俗文化として後世に伝えていきたいものである。

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