レキオ島唄アッチャー

「底」の字がつく民謡の不思議、その5。つぃんだら節

 「つぃんだら節」
 黒島からの強制移住をテーマとした哀歌「つぃんだら節」には、移住先の石垣島野底の地名が出てくる。「底」の文字の用例としては通常かも知れないが、地名に使われた「底」について、深い意味があるらしい。外間守善氏は<沖縄古語でも、「スク(底・城)」の意味は「遥かに遠い所」>だとのべている。後から詳しく見たい。

 <石垣市字野底。野底村の創建は享保17 (1732 ) 年で、黒島からの寄人による(『八重山島年来記』56 ・57 頁)。黒島と野底の関係は、この寄人による村の創建以前から、黒島の人々が舟を操って野底に出耕するという形で存していた。(波照間永吉著「八重山歌謡にみる地名」)>
 「つぃんだら節」は次のように歌われる。
 ♪とぅばらまとぅ我(パ)んとぅや ヤゥスーリ 童(ヤラビ)からぬ遊びとーら 
 ※ツィンダラ ツィンダラヤゥ
 かなしゃまとぅくりとぅや くゆさからぬむつぃりとーら 以下ハヤシ省略
 ♪島(スィマ)とぅとぅみで思だら ふんとぅとぅみで思だら 
 沖縄(ウクィナー)から仰(ウィ)すぃぬ 美御前(ミョーマイ)からぬ 
 御指図(ウサスィ)ぬ
 ♪島分(スィマバ)がりでうふぁられ ふん分がりでうふぁられ
 うばたんがどぅけなり 野底(ヌスク)に分ぎられ
           
    高嶺ミツさんが歌う「つぃんだら節」は何時聞いても感動する
        
 歌詞の意訳は次の通り。
 ♪貴方と私は子どものころから遊び仲間 貴方と私は幼少からの睦まじい仲だった ※かわいそう、かわいそう
 ♪島のある限り 村のある限りと思っていたのに 沖縄(首里王府)からのご意思 
 国王からの命令だった
 ♪島分けで分けられ 村分けで引き離され 私が海を渡り 野底に連れてこられた
  注・「つぃんだら」をここでは「かわいそう」と訳しているが、私が習った八重山民謡の先生は「孫のことを、“つぃんだら”というから、可愛いという意味がある」とのべていた。ただ、この曲の場合は「かわいそう」が適訳だと思う。

 黒島に住む男・カナムイと乙女・マーペーは恋仲だった。しかし、村の道を境にして、移住する者と残留する者が決められた。マーペーは移住させられ、カナムイは島に残された。マーペーが移されたのが石垣島の北部の野底である。
 マーペーは、故郷の黒島にいる彼を見たいと思って、険しい野底岳に命がけで登った。でも、野底岳の南西には、沖縄で最高峰526㍍の於茂登岳(オモトダケ)がそびえ立ち見えない。それでも、毎日毎日人目を忍んで山に登り、神に祈った。祈りながらマーペーは次第に石と化していった。いまも山にはその岩があるという。
 <この黒島からの寄人によって創建された野底村は1934 年、ただ一人だけで村を守っていた老女(野底マーペーアーパの名で呼ばれていたという) とともに廃村となった(『八重山歴史』245 頁、波照間永吉著「八重山歌謡にみる地名」から)>
 マーペ―の悲話があるからだろうか、野底の地名の響きにも何故かもの悲しさを感じるのは私だけだろうか。

スポンサーサイト

八重山民謡 | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<「底」の字がつく民謡の不思議、その6。長山底ぬあやぐ | ホーム | 「底」の字がつく民謡の不思議、その4。山原ユンタ>>

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

| ホーム |