レキオ島唄アッチャー

変容する琉球民謡、八重山から本島へ。「世果報節」

 「世果報節」(ユガフブシ)
 八重山古典民謡をもとにした曲でも、沖縄本島で歌われる曲とは、その印象が相当に異なる場合がある。その一つが「世果報節」である。類似曲は、本島民謡の「サーサー節」である。こちらは恋歌であり、旋律は似てても、まるで別の曲のように聞こえる。元歌の「世果報節」は、「ハナリ・パナリ」の通称で呼ばれる新城島(アラグスクジマ)を発祥の地とする歌だ。歌意を紹介する。
                        
 ♪昔から評判の高い わがパナリ(新城)島は タカニクを背にして 豊作をもたらす畑地と
  向きあっている
  (タカニクは人工的に石を積み上げて造った物見台のこと)
 ♪年々の作物は 豊作だから 首里王様への上納物として 真っ先に納めよう
 ♪家ごとに倉ごとに 積み余してある穀物は 酒や神酒を醸造して 祝い楽しもう
 ♪雪のような白髪を戴いている お年寄りは数多(アマタ)くいて 上座に座って
  なんと心楽しいことよ
 ♪数えきれないほど 若者たちが勢揃いして 歌を歌い三味線を掻き鳴らし
  立ったり舞ったりしているよ
 題名の通り、豊かな自分の島を褒め、豊穣の世を祝う内容である。豊作の時は、家ごと倉ごとに穀物を積み余し、お酒を造って祝ったことがうかがわれる。お年寄りを上座にかざって大事に扱い、若者たちは歌三線を奏して舞い踊り楽しんだ様子がつづられている。
 この祝いの場面の情景は、先に見たように、本島の民謡「祝い節」でも歌われる。祝いの場の情景は、八重山も本島も共通していたのか、それともこういう内容の琉歌があって、どちらでも使われたのだろうか。その関係はまだわからない。「祝い節」の元歌は、「舟越節」だとされる。それはあくまで旋律の面である。歌詞の面では、むしろ「世果報節」と部分的に共通点がある。
 ところで、八重山古典の調弦法は本調子・二揚・一揚調・三下げ(一二揚)の4通りある。八重山は本調子と二揚曲がとっても多いなかで、この曲は唯一、珍しく三下げの曲である。といっても、この曲は、二揚で演奏しても、三下げの「老」の位置を二揚の「下老」にするだけで演奏ができる。なぜ唯一、三下げにしたのかよくわからない。
 本島で歌われる「サーサー節」は、旋律はそっくりである。けれども、歌詞は「サーサー」という出だしが同じだけで後は、まったく無関係の内容である。
                         

 「サーサー節」の歌意は次の通り。
♪サーサー月の夜は清か 寝ても寝られない 友達を連れて それ遊びたい サー近寄っておいでよ
  彼女よ
♪サーサー さあ押し連れて眺めて遊ぼう 今宵は名に響く 十五夜であるから あれっ近寄って来いよ
  愛しい彼氏よ
♪サーサー 月も照り美らさ 糸探せ 童 玉の露拾って それ 貫いて遊ぼう
♪サーサー今宵ど遊ばれる ああ何時遊ばれるか ここにいて互いに それ踊って遊ぼう 
  あれっ近寄って来いよ  愛しい彼氏よ
♪サーサー 遊びするうちに 月も西に下がって さあー立ち戻ろう それ夕べの時間 アネ近寄って来いよ 愛しい彼女よ アネ今日は別れて 明日遊ぼう
 元歌は祝いの歌、こちらは恋歌とまったく曲想は異なるのに、なぜか恋歌としも、とっても味わいがある。唱者の上間綾乃も得意にしており、一度生歌で聞いたことがある。
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