レキオ島唄アッチャー

「ヒヌカンのはなし」を聞く

 「沖縄県民カレッジ――美ら島沖縄学講座」で今回は「ヒヌカンのはなし」と題した講演があった。講師は沖縄国際大学非常勤講師の稲福政斉氏。以下、稲福氏の講演から勝手にかいつまんで紹介する。

1、ヒヌカンとは何か

 人間生活に欠かせない火や水はありがたい存在であると同時にそれへの畏れから、火や水を崇める火の神、水の神は世界どこにもある。

沖縄のヒヌカン(火の神)信仰は、古くから火への信仰と中国の竈神(かまどの神)信仰が融合したもの。
 沖縄では位牌より古くから信仰の対象とされた。

昔のヒヌカンは、石を3つ置いたもので、その原型は鍋を火にかけられるように石を3つ置いた「3石カマド」である。カマド自体がヒヌカンだった。

ヒヌカンの呼称には、ヒヌカン、フィヌカン、ピナカン(火の神)、ヤヌカン、ダヌカン(家の神)、ウカマ(御竈)、ウミチムン(御三つ物、3つの石)などある。

 

2、ヒヌカンの機能

1)一家の守護神

ヒヌカンは、火とは関係のない、一家の繁栄、家族の健康、家族の出産・結婚・死亡など日常の家庭内のあらゆることを拝む。ファイアー(火)の神ではなく、一家の守護神である。

各家庭のヒヌカンはそれぞれの家の神で、普通家族以外の人は拝まない。

(2)ウトゥーシドゥクル

 御通し所、遥拝所のこと。親元の位牌や祖先の墓を拝むことができない場合、ヒヌカンを通して祈願や報告をすれば、祖霊に通ずると考えられる。

               

            


        「御願ハンドブック」
          ヒヌカン概観図(『よくわかる御願ハンドブック』から)
    
 3、ヒヌカンのまつりかた

 伝統的なまつりかたは、カマドの後方に3個の石(ミチムン)を置き、神体あるいは「よりしろ」(依代、神霊がよりつく物)とした。古くは、カマドそのものをヒヌカンとして拝んだ。

 戦後、神体や「よりしろ」は3個の石からウコール(香炉)へとなった。家庭の台所にカマドがなくなり、祀る場所も、カマドの背後からコンロ後方や壁付の棚へと変化した。

 とくに近年みられる傾向として、ステンレス製のヒヌカン置台が用いられる。白い磁器のウコールやハナイチ(花生)が普及した。

 若い世代のヒヌカンの祭祀儀礼について、ヒヌカンの上天、下天(別途説明)などの再認知が広がっている。その背景には、ユタの指導やヒヌカンのやり方の伝承が途絶えてきて、マニュアル本から知識をえる影響も大きい。

 

4、上天と下天

 ヒヌカンは、年に一度旧暦1224日に天に上り、家族の1年間の行いのすべてを天の神に報告するとされる。
 ウグヮンブトゥチ(御願解き)もこの日に行なう。1年の成就したことに感謝し、不幸なことは解消するように願う。本来は上天、下天とは関係なかったが、いまは合わせて拝むようになっている。

 天に上ったヒヌカンは、下天する。そのさい1年間の家族の行いを記録する新しい帳簿を携えてくる。その日は、地域や家庭による異なる。12月末日、11日、13日、14日(中国南部)。沖縄では、下天が14日では、正月3日間は不在となり、年始の御願をするのに困るので早く帰ってきてほしいという思いがあり、12月末日や11日になったのではないか。

ヒヌカンは3体の神で、このうち2体は年末に天に上って、家族の行いを報告し、1体は残って家族を守るとする地域もある。

 

5、ヒヌカンの性別、数や禁忌

 ヒヌカンの性別と数は、中国では現在はおおむね男神1体とされる(1組の夫婦と考えられた時期もあった)。日本では、男神とする地方が多い。1あるいは3体。神の種類によって異なる。

 沖縄では、女神と考える傾向が強い。数は3体とされることが多い。3個の石を置いたことから、供物も3個供えるため。

 ヒヌカンをめぐる禁忌として、「台所では大声でどなったり、文句を言ったりしてはならない」。ヒヌカンは耳が遠いため、自分に文句を言っていると勘違いされ、怒りにふれるとされる。

 「供物のウサンデー(お下がり)は男が食べていけない」。ヒヌカンのウサンデーは、女性のものとされる。

 「ウコール(香炉)の掃除は12月24日以外にしてはならない」。香炉の灰の中には、ヒヌカンが家族の行いを記録した帳簿が隠されているとされ、普段みだりにさわると、帳簿を処分しようとしていると勘違いされ、怒りにふれるとされる。

 大筋、このような話だった。沖縄の人にとってヒヌカンは、日常生活の上でもっともお世話になっている神とされる。それだけに、質問コーナーでは、県民カレッジの講座としては最高の40通ほどの質問が寄せられ、関心の高さが示された。

スポンサーサイト

民俗 | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<造船所を「スラ」と呼ぶのはなぜか、その1 | ホーム | 歴史が今に生きている沖縄、海ヤカラ>>

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

| ホーム |