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レキオ島唄アッチャー

「海ヤカラ」をめぐる伝承、その2

 「海ヤカラ」に歌われた女性の家系は、いまも継承され、思わぬ方がその末裔であることを知った。
 「週刊レキオ 島ネタchosa班」(201617日付)には次の記述がある。
ちなみに、「海やからー」に恋した娘とは、現在の仲間門中宗家で、ラジオパーソナリティー・玉城美香さんのお母さんの実家だということも判明!>
 美香さんは、毎日ラジオで声が流れる人気パーソナリティーで、糸満市在住でもある。歌に出てくる美女が実家の先祖にあたるとはビックリ。
 沖縄では、歴史上の人物や歌に登場する人たちも、その子孫が身近に存在することがしばしばである。その事はこのブログでも「歴史がいまも生きている沖縄」と題して書いたことがある。
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                                 糸満の白銀堂 

 「海ヤカラ」の歌の舞台となった糸満市真栄里の「ドンドンガマ」
がある場所は、いま「ロンドン杜公園」となっている。この「ロンドン」と名付けられていることをめぐって、いろんな噂話が飛び交っている。
 外国8が漂着してガマに住み着いた、イギリス人なので「ロンドンガマ」と呼ばれた。8人の男だからエイトマンと呼ばれ、それが訛って「糸満」という地名になった。糸満の人は、イギリス人の血が混じっているので美人が多い……。
 これらの話しは、とても信じがたい。
 イギリスなど外国人が琉球に漂着した場合、ただちに王府に連絡がいって対応することになっていた。外国人への対応は、王府にとって重要な外交問題であるからだ。糸満市大度海岸に上陸したジョン万次郎の場合でも明らかだ(このブログで何度かアップしている)。もし漂着が事実なら公的な記録が残っているはず。外国人が8人も集団で上陸して住み着いて、王府が何も知らなかったということはありえないだろう。しかし、寡聞にしてそんな記録の存在は聞いたことがない。


 エイトマンから「糸満」の名前になったというのも出来過ぎた話ではないか。発音が似ているから生まれた語呂合わせの感じがする。糸満の地名の由来はもっと別にあるはずだ。糸満といえば漁師、「海人(ウミンチュ)」の土地だった。
「魚を取る人」を意味する「イヲトリアマベ」が「イユ・トゥイ・アマミ」「イトウマン」そして「イトマン」に変化したとする説、「魚の集まる所」と意味の「イジュマル」が「イチュマン」「イトマン」に変化したとする説などがあります>


 琉球朝日放送「地デジカ地名辞典」は、糸満の地名はこのように魚と関係があるとする。漢字の「糸満」は18世紀の書物に初めて登場したそうである。こちらの方がより説得力がある。

 
糸満に美人が多いのは事実らしい。でもイギリス人の漂着が史実でなければ、イギリス人との混血というのはありえない話しとなる。
 ではなぜ「ロンドン杜公園」などという名称があるのだろうか。同「週刊レキオ」が調査結果について書いている。

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                                                糸満港の旧正月風景
 糸満市の担当者に「
4号ロンドン杜公園はイギリスのロンドンと関わりがあるのか」と尋ねたところ「それは全く違うと思いますね」と教育委員会生涯学習課・主幹兼文化振興係長の加島由美子さんはあっさりと否定したという。加島さんは、「ロンドン杜公園」という名称の背景には、先に書いた「海ヤカラ」と村の美女とのロマンスの伝承があり、「海ヤカラ」の俗謡の1節に、「誰がし名付きたが、ドンロンぬガマや 真栄里美童ぬ 忍び所」とあると紹介している
 ここでは「ドンドン」ではなく「ドンロン」と記している。
「ロンドン」説について、「糸満市史」では次のように記述されているそうだ。
「ロンドンガマ」なのか、「ドンドンガマ」なのか、実際の歌では呼称に差異が生じている。糸満では地域によって、だ行とら行を混同する傾向にあるそうで、はやしやすいのは「ロンドン」よりも「ドンロン」だったのだろうと解釈しています。
「ドンドンガマ」がいつの間にかゴロが似ているので「ロンドンガマ」に変化したのではないかとのことだ

以上、「週刊レキオ 島ネタchosa班」(201617日付)から紹介した。

 つまり、ロンドンの名前の由来としてイギリス人の漂着ということは、史実としてはまったく確認されていないことである。「ドンドンガマ」「ドンロンガマ」がいつの間にか「ロンドンガマ」に変化し、「ロンドン」の語感からイギリスを連想し、いつのまにかイギリス人の漂着説が生れた一種の都市伝説ではないだろうか。私はそんな風に思えてならない。



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