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第一尚氏の最後の王は尚徳ではない、その1

琉球が3つの小国に分かれていた三山時代に琉球を統一した尚巴志が打ち立てた第一尚氏の王統は、第7代の尚徳をもって終わったというのが、琉球史の定説とされる。しかし、どうもそうではない。尚徳の子どもが8代目国王を継いでいたという見解があることを最近知った。

内田晶子・高瀬恭子・池谷望子著『アジアの海の古琉球―東南アジア・朝鮮・中国―』を読んだ。その中で高瀬恭子氏が「第一尚氏最後の王『中和』」と題して論述している。

 著者の3人は、琉球王府時代の外交文書を収録した『歴代宝案』の第1集、『明実録』の琉球国関連史料、『朝鮮王朝実録』のうち中国では明代に当たる部分の琉球国関連史料を、読み下し文とし注解を付して世に送ってきた方々である。

 

朝鮮漂流民の証言
 
  高瀬氏著「第一尚氏最後の王『中和』」から要約して紹介する。

高瀬氏は「尚徳の死後、その第二王子の中和が僅か1年ほどではあったが王位にあった」ということを、同じ時代に書かれた『朝鮮王朝実録』によって検証してゆく。

尚徳は即位の後、君主としての徳を修めず暴虐無道で民をしいたげ、朝貢しなくなった喜界島に親征し、その後驕慢ますます激しく、国政は乱れ、遂に在位9年にして死去した。その時法司(注・三司官)は、残された幼い世子を立てようとしたが、国人が反対し、世子は殺害され、固辞する御鎖側官金丸が推挙され、尚徳の世子尚円として明に請封し、第二尚氏が始まった。

この所伝は、琉球国の正史『中山正鑑』などによるものであり、実際のところは金丸のクーデターであった、というのが現在の定説となっている。



        
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                       尚徳王御陵跡(那覇市識名)

 ここで問題としたいのは、尚徳が成化5(
1469)年に死去した時、数えの29歳で、残された1人の幼い世子が殺害されたとする点である。

ちなみに『中山世鑑』は世子の年齢について「世子ハ未ダ十歳ニ満タズ、七八歳ノ間」「幼稚ノ世子」と記し、『蔡鐸本世譜』は「幼稚之世子」を乳母が「擁抱」して逃れたとし、『蔡温本世譜』は「時世子幼冲」で、王妃と乳母が世子を「擁着」して隠れたと記している。


 <ところが、宮古島に漂着して、天順5(
1461)年の4月から7月まで琉球の王宮に留まり、その年の12月に琉球国の使者に伴われて朝鮮に帰国した漂流民肖得誠らは、朝鮮当局の取り調べに際し、次のように述べているのである。

「(一、)国王の年は33歳である。一、国王には子が4人ある。長子は15ばかりで、ほかは皆幼い。長子の外出の際は、軍士十余人がつき従う。王子たちは国王とは共に住まず、別の所に居る」。

漂流民の滞在した天順5(1461)年は、『世鑑』などに、21歳で尚徳が即位したと記されている年で、漂流民の供述とは大きく異なっている。



 同じ取り調べの中で肖得誠らは、王宮の南の回廊わきの部屋に住み、日々国王のお目通りを賜わり、手厚い供応を受けていた、と述べている。つまり彼らは王宮で、つぶさに国王を実見する機会を持っていたのである。国王と王子たちについて彼らの語るところをもう少し辿ってみよう。

「国王が現在居住する宮城の南に旧宮がある。その層閣や城郭のさまは、普段住んでいる宮と同じである。時々往来し、23日あるいは45日、旧宮に逗留する。国王が外出する時は、軍士役300余人が甲(よろい)を付け騎馬で侍衛する。手にする武器は、弓矢や槍や剣で、鉤(かぎ)のような形のものもある。軍士らは国王の前後に列をなしてゆく。国王はある時は轎(かご)に乗り、ある時は馬に乗る。侍衛の軍士は歌を唄うが,その節廻しは朝鮮の農民が歌う俗謡のようである。年少の3人の王子は前方を、長子は後方から国王に付き従う」。>

 

これまで『中山世鑑』では、尚徳が21歳で即位し、死去したのは数え29歳で、残された子は1人で10歳未満の幼い子だったとされてきたが、尚徳即位の1461年、琉球に滞在した朝鮮漂流民の肖得誠が帰国した際の取り調べで、尚徳は33歳で、子どもは15歳くらいの長子ほか4人いたと証言している。尚徳の年齢が12歳も差があり、子どもの年齢、数もまったく食い違っている。これは何を意味するのだろうか。

高瀬氏は「その記述のうちの幾つかは、のちの第二尚氏時代の王府の記録である『琉球国由来記』や16世紀以降の冊封使の記録とも一致し、漂流民の見聞の信憑性を証している」とする。








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