レキオ島唄アッチャー

戦争・平和の「とぅばらーま」、その2

大田静男著『とぅばらーまの世界』から、「戦世と平和」の歌詞紹介の続きである。
 「戦世の哀れ語り継ごう」
 「ぴぃとぅで生(マ)れて 畜生(チクショウ)ぬ身に堕(ウ)てー 戦(イクサ)ぬ哀(アワ)り 世々(ユユ)に語(カタ)りょうら」
歌意
 「人間に生れながら畜生道に身を堕した。戦争の悲惨は永遠に語り継ぎましょう」

 戦争は人間を鬼にするといわれる。二度と繰り返してはならない戦の世。戦後71年がたち、日本が再び海外に派兵し、「殺し殺される」ことにつながる安保法制が動き出そうとしている。それに連動して沖縄でも、与那国島に続いて、石垣島、宮古島にも自衛隊配置がすすめられつつある。
 沖縄戦の悲惨な体験を絶対に風化させてはならない。子々孫々まで語り継がなければならない。

 「さにーさにーし かいるんでどぅ にがいまっつだるぃ なきり かいるんでえ いみんざーん うもーなーった」
歌意
 「笑顔で帰って来るものだと願いつつ待っていたのに、泣いて帰るとは夢にさえも思わなかった」

 出征した夫や息子か、もしくは疎開などで親元を離れた子どものことを思って詠んだのか。いずれにしても、願いもむなしく帰らぬ人となったことへの深い悲しみが胸をうつ歌である。

 「此様(クヌザマ)なるんでや ばな思(ウモ)うなた いくさ始(ハジ)みだ ゆむんざどぅ ばな恨(ウラ)む」
歌意
 「此の様になるとは思いもよらなかった。戦を始めたものを私は恨む」

 この歌は1949年「とぅばらーま大会」で作詞の部の佳作に選ばれた作品で、作者は大浜兼むいさんという方だとのこと。国民をだまして侵略の戦争に道に突き進んだ軍国日本。戦争を始めた者たちへの恨みは強い。「不戦の誓い」から71年を経て、ふたたび「戦争できる国」への道を歩もうとする日本。「思いもよらなかった」事態を招かないため、真実をしっかりと見抜き、ふたたびだまされないようにしたい。

 「うふぴとぅ たかぴとぅ なりでどぅ 育(スダ)てーきいだ 腹(バダ)ぬ底(スク)から いくさどぅ恨(ウラ)む」
歌意
 「成長して、立派な人になれと大切に育てたわが子(戦場に送られて死んでしまった) 腹の底から戦を恨む」

 「うふぴとぅ たかぴとぅ」とは漢字で書けば「大人 高人」。八重山の子守り歌の名曲「あがろーざ節」でも、この言葉が登場する。
 「大人ゆなりとーり 高人ゆなりとーり」と歌われる。どちらも「立派な人になっておくれ」という意味である。すべての親の願いである。戦場に送るために育てたのではない。にもかかわらず、その願いもむなしく、子どもを亡くした親の戦争を恨む気持ちが切々と伝わる。
 
 「腹(バダ)ぬ満(ン)つすく 米(マイ)ぬんぼん 給(タ)ぼうらりでー いじばいだし 荒(ア)り田(ダ)―ば 耕(カ)いすんでー」
歌意
 「腹一杯銀飯を食べたい一心で、力を振り絞り荒れ田を耕しているのです」

 戦後の食糧難、飢餓時代を詠んだ歌だという。

 「にたさ がまらさ うち忘(バス)けーり 戦世(イクサユー)ぬ季節(チティ)ば またん 迎(ンカ)いるんでいなー」
歌意
 「戦争時や戦後の憤怒や恨み、悲しみも忘却し、戦争の時代をまたも迎えるような時勢だ」

 沖縄では県民の4人に1人が犠牲になるという沖縄戦の傷跡がいまなお生々しく、戦争の悲惨さを語り継がれている。しかも戦場に直結した広大な米軍基地が身近にあるため、戦争の恐ろしさ、恨みと悲しみを忘れ去ることはできない。
 一方では、沖縄戦で日本軍により「集団自決」が強制された史実を歪める教科書検定がまかり通り、日本の侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」系の教科書が、石垣市、与那国町で採択された。それと表裏一体のもとに自衛隊の部隊配備がすすめられている。この歌の内容は、今日の状況の下で重要な意味をもっている。
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               八重山戦争マラリア犠牲者慰霊之碑

 「あたら生命(ヌティ)し 換(カ)やー賜(タボー)れーる 弥勒世(ミルクユー)や 肝(キィム)かい染(ス)めーり 擁護(マム)り貫(トゥ)しょうら ンゾーシヌ 幾世(イチィユ)までぃん」
歌意
 「大切な命と換えて戦争から学んだものは平和な弥勒世である。その精神をいつまでも守り貫き通そう」

 「弥勒世(ミルクユー)」とは、「平和で豊かな世」という意味である。八重山では、とくに昔から「弥勒世」は民衆の切なる願いであった。沖縄戦の痛苦の体験を通じて「平和な弥勒世」こそ何よりも大事であることを深く心に刻んだ。平和を守り貫くことは、県民の総意なっている。
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