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琉球弧の歴史と喜界島(13)、尚徳王

 喜界島に深いつながりがある尚徳王
 もともと私の関心は、琉球王国による喜界島への征討問題だった。つまり、琉球から遠く離れていて、しかも奄美大島に比べればさほど大きくない島に、琉球がわざわざ莫大な費用と兵力を使って征討するのはなぜなのだろうか。喜界島とはどんな関わりがあったのだろうかという単純な疑問が出発点だった。これまで紹介した識者の論考によって、喜界島のもっていた特別な歴史と役割についておおむね理解ができた。
 
 尚徳王と喜界島との関わりについて、もう少し紹介しておきたい。
 琉球が奄美諸島にその支配を広げたのは、15世紀になってからのことだ。奄美の中で、もっとも抵抗を続けたのが喜界島だったという。
 <15世紀中葉から琉球王国による奄美諸島への「版図拡大」の軍事行動が顕在化した。久米島に漂着した朝鮮人の証言(『朝鮮王朝実録』世祖実録8年条)によれば、「(奄美)大島は1441年頃か1446年頃には服属したが、一方、鬼界島は毎年のように王府軍の攻勢を被りながらも抵抗し続けていたことが分かる」(豊見山和行編『琉球・沖縄史の世界』、安里進著「琉球王国の形成と東アジア」)>
 「第1尚氏王統最後の王尚徳が、琉球に従わないことを怒り、1466年春、自ら2000余の大軍を率いて喜界島に親征した。その16年前にも、尚金福王の弟、布里が攻めたふしがある。さらに尚元王代(1571)にも討伐されている(「最新版・沖縄コンパクト事典」から)。

 琉球王府の史書『球陽』には、喜界島が朝貢しないので、何年も攻撃していたことや、それでもが成功しなかったこと。尚徳王は怒り、2000人の兵を率いて征討したことが記録されている。
 この尚徳王が征討した時代の喜界島は、「すでに城久遺跡群は機能を停止」していたという。しかし「琉球国にとっては侮りがたい勢力が喜界島に存在していたから、尚徳王が喜界島征討に踏み切ったと考えられます」と福寛美氏は指摘している(『喜界島・鬼の海域 キカイジマ考』)。
 こうして喜界島を制圧し、「琉球王国はようやく奄美群島全域を支配下に置いた」(ウィキペディア)。
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                  尚徳王陵墓跡の碑
 尚徳王の喜界島遠征は、みずからの権力を滅ぼす要因にもなった。
 無謀な遠征により首里王府の中で人心を失ったことが、首里王府でクーデターが起きる背景にあったとされる。尚徳王は、金丸の即位を聞き、憤って海に身を投げて死んだとされる。
 その一方、死なずに遁れたという伝承が根強くある。遁れた先の一つに喜界島があり、喜界島には尚徳王のお墓まであるという。でも、喜界島を征討したのなら、恨まれているはずなのに、遁れる先に選ぶとはどういうことなのだろうか。疑問もある。

 喜界島と沖縄のつながりについて、意外な人物の証言がある。元沖縄県知事の稲嶺恵一氏である。稲嶺氏は、翁長雄志県知事とは兄弟門中(先祖が兄弟という男系血縁組織)で、第一尚氏系の士族だったとして、次のような伝承を語っている。
 クーデターが起きた時、たまたま祖先が喜界島に行っていた。いったん本島に戻ったけれど、殺されるかもしれないと喜界島に戻った。だからお墓は喜界島にある。墓参りに行っていた(松原耕二著『反骨』)。
 その一方、これまで紹介したように、喜界島が東アジアの交易拠点で、沖縄諸島への物産の流通とともに、喜界島から沖縄への移住もあったという。喜界島から渡来した人たちの子孫もたくさんいて、中には琉球の有力者になった人もいただろう。それらのことを考えると、喜界島が奄美諸島のなかの一つの島というだけではない、特別な関係がある島だったことがうかがえる。
        護国寺
                         波之上にある護国寺

 尚徳王について、倭寇勢力と関わりがあるという指摘がある。以下、福寛美氏の著作からの紹介である。
 尚徳王は、喜界島での勝利を八幡神の加護のたまものと考えた。喜界島からの帰途、海路に浮鐘(海に浮かぶ鐘)を得て、八幡台菩薩の霊験として安里に八幡宮を勧請し祀ったこと。波上宮の顕徳名高麗鐘が高麗に侵入した倭寇の略奪品で、それが那覇港に運ばれ奉納されたものであろうという鎌倉芳太郎の見解を引用したうえで、次のように結論づけている。
「浮鐘への進行は倭寇の習俗、とされています。その倭寇の習俗そのままの行動をとった、とされる尚徳王は、まさに倭寇そのものだと考えられます」(『喜界島・鬼の海域 キカイジマ考』)。
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