レキオ島唄アッチャー

八重山芸能と舞踊、その5

 儒教倫理を強調した勤王流
 大田静男氏は、「勤王流」について次のような見解を示している。
 <喜舎場の論考は比屋根の弟子で喜舎場と親交厚かった諸見里秀思からび聞き書きを中心に展開されている。その喜舎場説に全面修正を迫ったのが宮良賢貞である。宮良は毛姓支流系図家譜をもとに『勤王流と毛姓比屋根安弼(アンヒツ)』を書き。喜舎場と異なった説を提起した。
 毛姓は踊奉行や踊童子を数多く輩出した名門であり、それゆえ“秘伝”として絵図入りの手振型本があったとしも不思議ではない。
 しかし、その「二十二手」は儒教的倫理の視点からの心得と技法を記している。
自由民権や仁徳天皇等の言葉からみて、宮廷舞踊の秘本であったり、冠船踊、関係者の創案だったとは思えない。むしろ池宮正治が指摘したように「儒教的倫理を強調した置県後の新時代に照準をあわせた意味づけ」ではなかろうか、それ故まさしく「勤王流なのである」と思われる。
 『勤皇流手振型本』は何等かの理由によって八重山滞在となった比屋根が綴ったものであるか、それとも廃藩によって失職を余儀なくされた王府の芸能関係者が、天皇の大御代を謳歌し、それによって再興を図ろうとしたものを長男安信(比屋根)が携えてきたのであろう。
 その本が何らかの形で諸見里の手に渡りその本をもとに諸見里が創作活動をしたのは確かである。
 八重山舞踊の系譜は雑多であり八重山舞踊の手振りを諸見里だけに収斂していくのはあまりにも短絡的であり、皮相と云わねばならない。またこの時期に、諸見里らの活躍が出来たのはそれ以前に八重山舞踊が開花し、蓄積されていたからにほかならない。(『八重山の芸能』からの抜き書き)>
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                    那覇市民会館での芸能祭から(記事とは関係ありません) 
 大田氏は、『勤皇流手振型本』が首里王府時代の宮廷舞踊の「秘本」だったという説明に疑問を呈している。また八重山舞踊の系譜は多様であり、勤王流が伝わる以前から蓄積があったことを指摘している。
 
 勤王流について、森田孫栄氏は次のような見解をのべている。
八重山舞踊は、慶応年間沖縄本島からの伝承によってあたかも短期日で創られたかの如き短絡的俗説が流布しています。勤王流説はそのひとつであります。これらの説は「勤王流二十二手振本」というものに拠っている訳でありますが、これには舞のすべてが解明されておらず、扇子の扱いの型すなわち男舞いの態のみが述べられているだけのものでありまして、この伝書の著書も現在のところ不明であります(『八重山芸能文化論』)。
 森田氏も、「勤王流二十二手振本」によって八重山舞踊のすべてが解明されたものではないことを強調している。
               
                  「鶴亀節」(記事とは関係ありません)
 天皇の世を謳歌した「勤王流二十二手振本」
 勤王流はなぜ「儒教的倫理を強調した」ものと見られるのだろうか。それは「勤王流の二十二手」を見ればおのずと明らかになる。たとえば、二十二手のうち、1から5までの手は次のように説明されている。

(1)「起恕(キジョ)、凱恕(ガイジョ)の心得」では、「尽忠興国の士、心胆寛恕に、公明正大…に勤めなば…人は信友し…大御代を 慕い、…太平を謳歌し、舞遊ぶ」。
(2)「斜歓、示視」では、「治国平天下の大御代は…向う處、敵無く歓迎(斜歓)の福音、四海に満ちて」。
(3)「恩顧、捧納」では、「国には大君、家には父母、国に君主なくば国樹たず、家に父母を失えば暗黒となるが如し。君親の恩、  深遠宏大なる哉」。
(4)「風靡(フウヒ)、招モウ(ショウモウ、漢字が出ない)、無窮」では、「風は大君の徳(命令)靡は民草天風に靡びき従い、会散  (招モウ)自由の民権の有難哉」
(5)「登峰、遠眺、瞬眸」では、「君子は自彊、…喩えば仁徳天皇高台に御昇り給い民の貧富の状を眺め遊ばされ、民を哀れみ給 うた御意の如し」(以下略)。
 
 一つひとつの手の説明を読むと、確かに天皇絶対の国家を讃美し、国に尽くし、父母に孝行することを強調している。これは、もはや琉球王国の時代の儒教倫理の枠を超えている。琉球王国が解体され、明治天皇制国家に組み入れられたもとでの、天皇を頂点とする儒教的倫理が軸になっている。しかも1880年代に高揚した「自由民権」までうたわれている。
 大田静男氏が指摘するように、「勤王流二十二手振本」は「宮廷舞踊の秘本」や「冠船踊、関係者の創案」というよりも「儒教的倫理を強調した置県後の新時代に照準をあわせた意味づけ」されたものと見るのが妥当ではないだろうか。
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