レキオ島唄アッチャー

オセアニアの海と大移動、その2 「海の人類大移動」

  海の人類大移動
  太平洋の島々への海の人類大移動について、さらに詳しく見てみたい。
 オセアニアへは、大きく分けてふたつの人類集団が移動してきた。古い方の移動は、今から5万年ぐらい前の最終氷期(更新世代)におこなわれた。インドネシアの島嶼部に住んでいたのは、土器もなく石器も簡単な打製石器しかもたない狩猟採取民で、島づたいにサフル大陸(注・ニューギニアとオーストラリアがかつて陸続きだった)へやってきた。この人々の子孫がオーストラリア・アボリジナルである。
 
 今から3万5000年前ごろには、さらにニューギニア島北東沖合の島々へ海を越えて拡散し、2万9000年前ごろにはソロモン諸島にまで到達した。ここまではニア・オセアニアとよばれ、次に渡る島が目に見えるほどの距離にある。
 新しい方の移動は、オーストロネシアン(オーストロネシア語を話す人びと)によるものである。その痕跡は今から3200年前ごろに、ニューギニア北東のアドミラルティ諸島に突然のように出現した。その特徴を一言で表すなら新石器文化といえる。 
 新しい遺跡では、土器や磨製石器をはじめ多様な道具や装身貝類、イヌやブタ、ニワトリなどの家畜骨がセットで出土するようになった。
 
 この急激な変化は、それまでの文化が変化したのではなく、東南アジア島嶼部から新しい文化複合をもった人間集団が移住してきたためである。この集団はニア・オセアニアをさらに東進し、それまで無人だったリモート・オセアニア(ソロモン諸島より東の島々)へと拡散した最初の人類だった。
 初期オーストロネシアンが残した遺物のうち、もっとも特徴的なものは、ユニークな装飾が施された土器である。ニューカレドニアの遺跡にちなんでラピタとよばれる土器は、メラネシアからポリネシアへというオーストロネシアンの移動経路を明らかにできる便利な指標である。
                 ラピタ土器
     国立民族学博物館特別展「オセアニア大航海展」にて展示中のラピタ土器(同博物館HPから)

 ラピタ遺跡は、西はビスマーク諸島からサモアにかけて分布し、今から2800年前には東端のサモアに到達していた。わずか400年で3400キロメートルのもの距離を東進したことになる。
 次々に新しい島へと拡散していった様子は、ラピタ遺跡から見つかる黒曜石から明らかである。アドミラルティ諸島のタラセア産の良質の黒曜石が、ソロモン諸島をはじめ、3000キロメートルも離れたニューカレドニアからもみつかっている。装飾のあるラピタ土器も、このような交易活動で使われていたと考えられている。

 フィジー、トンガ、サモアまで急速に拡散したオーストロネシアンは、それまで無人だったこれらの島々で1000年ほど停滞した。その間にラピタ土器の紋様は無紋化し、サモアでは早い段階で土器づくりが中止された。また、石斧の断面の形も三角に変化し、貝製装身貝類も貧弱になるなど、サモアでおこったいくつかの文化変化によって形成された文化複合は、のちのポリネシア文化へと引き継がれていった。
 オーストロネシアンの一部は、今から2000年前ごろに再び東へ移動をはじめた。サモアがその出発点となっていた。タヒチを含むソサエティ諸島からマルケサス諸島へかけて紀元後100~300年に移動し、そこから北はハワイイ、東はラパヌイ(イースター島)、最後に南西のニュージーランドへと拡散した、というのがその壮大な拡散の大まかな流れである。
 移動の時期については、最近の研究によってかなり新しい年代に修正された。ハワイイへは紀元後400年、ラバヌイへは紀元後600~700年、ニュージーランドへは紀元後1000~1200年ごろであった。

 ミクロネシアは、ポリネシアよりも複雑な人間移動の歴史をもっている。もっとも早く人間が植民したのは西部の島々で、その中でもマリアナ諸島がもっとも早かった。今から3300年前には土器や磨製石器、多様な貝殻装身具をつくる人々が、東南アジア島嶼部、おそらくフィリピンあたりから拡散してきたと思われる。
 ミクロネシア中央および東部には、多くのサンゴ島と3つの火山島が分布しているが、西からではなく、南から北上してきたラピタ文化の流れを汲む人びとによって植民された。今から2000年前ごろのことで、西部ミクロネシアより1500年もあとである。
土器は、拡散初期には3つの火山島でつくられていたが、すぐにつくられなくなった。また、道具の素材としては石よりも貝が主として用いられ、貝斧や貝ナイフ、貝製の装身具類などがつくられた。
 以上は、国立民族学博物館編『オセアニア 海の人類大移動』の印東道子著「大海原への植民 考古学からみたオセアニア文化」から要約して紹介した。
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