レキオ島唄アッチャー

八重山民謡で歌われる稲粟、人頭税で粟も上納

 人頭税で粟も上納した
 八重山民謡を歌っていると豊年、豊作の願いを歌う曲には稲と共に粟がよく登場する。琉球王府の時代の農作物による納税は、八重山諸島は米、宮古諸島は粟が基本だったと聞いていた。八重山では、水田のない島にも人頭税で米の上納を強いたので、水田のない島から石垣島や西表島に通って稲を作ったという史実もある。
 「八重山では、宮古島と違って米が基本だから、粟が民謡でよく歌われているのはなぜだろうか」と不思議に思っていた。
  
 最近、沖縄県立芸大附属研究所の「八重山の歴史と文化」講座で、得能壽美氏の講演を聞き、同氏著『近世八重山の民主生活史』を読んでいたら、その疑問に答えてくれる記述があった。
  「八重山近世における人頭税制における粟納」で詳述されている。得能論文の結論を要約して紹介する。
八重山のあらゆる島・村において、人頭税の上納穀は米でなければならない、とはいわれていない。近世八重山における人頭税の現物納は、米・粟・布を主体として、その他の畑作物による上納が可能であったのである。米は他に対して賦課された上納物であったが、八重山はむしろ、明治36年に田2180町2反余・畑3922町6反余とあるように(琉球政府1967)、全体亭には畑がちの地域であった。

 八重山全域で粟が作られていた
 粟は近世の八重山全域で作られていた。近世八重山に賦課された人頭税の穀物納分は米だけではなく、八重山の各地で栽培されていた粟が重要な上納物になっていた。その粟は、黒島などの例から、基本的には畑租であったようだ。しかし、先にも述べたが、近世八重山に賦課された人頭税に関する史料(当時の公文書)では、田租・畑租の区別はなされていない。「米・粟」という文言において、田と畑の租税を意味している可能性はあるが、それは単純に合算されている。
 また、史料上に「~米」とある場合でも、その内容は必ずしもコメではない場合がある。「球陽」(注・首里王府の史書)など漢文で記された史料上でのことだが、コメを「大米」として、アワを「小米」と表記することもみることができる。
                  粟               
                          粟
 実際の賦課・徴税においては、史料でみるかぎり、賦課において田畑の区別をしないことで、徴収においても田畑の区別、つまり米・粟の区別をしていなかったのではないだろうか。むしろ、粟を二度夫賃米(注・緊急の際などに放出する)として貯えさせ、古米上納の原則から、粟での上納を制度化していったとすらいうことができるかもしれない。
  したがって、「水田のない島」は粟を上納すればよいという、最初の引用した喜舎場永珣の指摘は正しい判断であり、いちがいに「水田のない島に米の上納を強いた」ということはできないのである。
 得能氏は、八重山に属する黒島における近世の農耕と人頭税の上納、あるいは西表島への通耕について、喜舎場氏の主張(喜舎場1949、注・「黒島郷土民俗誌」)を次のように紹介している。
 「黒島は珊瑚礁の島であるために水田は皆無であって、遠く海を越えて西表島に渡り、稲作に従事するという困難さがあった為に、納税の如きも粟納であった」。
  「同島(註・黒島)は、珊瑚礁のために水田は皆無で、納税は全部畑の収穫を以てこれを納付しなければならない状態で、なかなか一通りの困難さではない」。
 得能氏はこれを整理して①黒島には水田がまったくなかったが、②畑はあり、③人頭税の上納は畑作物で行われ、具体的にそれは粟であった。それにもかかわらず、④西表島に通耕して稲作を行なっていたというのである。

 政策的に米納化へ進んだ
 得能氏は、八重山で粟が広く作られ、上納されたことを明らかにしたうえで、米と粟の関係について次のように指摘している。
  しかし田租と畑租が同等とされ、米と粟が等価であるならば、労働力を可能なかぎり稲作に向けた方が有利であったのではないだろうか。そして、鳩間島の例にしてみたように、他島での上納田地の配分は、税制の面からだけいえば「米の上納を強いた」ということができる。当然のことながら、近世を通じて農業技術や耕地の環境が同じであるわけではなく、政策的には水田作=米納化への道を進んだと考えるのが自然であろう。
  得能氏は、結論として、水田のない島から他島へ通耕して米を作った事実について「米の上納を強いた」ということができるし、政策的には「水田作=米納化への道を進んだ」ことを明らかにしている。
             
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