レキオ島唄アッチャー

神の島・久高島の祭祀と暮らし、祭祀集団

 久高島の祭祀集団

  島の祭りや行事を支えるのは、祭祀集団である。島の祭祀集団とその仕組みについて、桜井満編『神の島の祭りイザイホー』から、かいつまんで紹介する。
  久高ノロ家では、島に永住した最初の祖先はシラタルー・ファーガナシー兄妹だったと伝える。この兄妹が結ばれて一男三女が生まれ、長男マニウシは外間ニッチェ(根人)、長女ウトタルは外間ノロ、三女タルガナーは久高ノロの祖だという。ノロは孫継ぎであったが、現ノロから嫁継ぎになった。ノロの補佐役としてウッチガミ(掟神)がおり、ノロのもとに島で生まれた30歳以上70歳までの女性がミコ(巫女)として、ナンチュ(30~41歳)・ヤジク(42~53歳)・ウンサク(54~60歳)・タムト(61~70歳)の4段階に組織されている。
  この島の女性がミコとしてタマガエー(魂替え)する儀式がイザイホーである。ミコのことをタマガエーとも呼んでおり、神を畏れ敬う念は生活に根づいている。イザイホーに門中(注・ムンチュー、男系血縁集団)ウクリ神が特別の座を与えられるのも、セジ(霊力・呪力)の高い者を畏敬する風の現れであろう(桜井満著「セジたかき島のまつり」)。
                     イザイヤマからハンガマミヤの祭場に登場する神女、東方(ニラーハラー遥拝)
写真はイザイヤマからハンガマミヤの祭場に登場する神女たち(『沖縄久高島のイザイホー』から)
 
  神を祀る者
  イザイホーには久高島に生まれ育った30~70歳までの女性すべてが参加する。島の女性はナンチュ(30~41歳)・ヤジク(42~53歳)・ウンサク(54~60歳)・タムト(61~70歳)と年齢別に4階層に組織され、島の種々の祭りや行事にミコ(神女)として奉仕する。島の30~41歳までの女性は、このイザイホーに参加することによって、初めて神女の資格を得、ナンチュになるのである。そしてナンチュ以下タムトまで無事につとめると、テェーヤクと称し、島の一切の行事から解放される。
  島には外間ノロ・久高ノロ以下8人のクニガミ(国神)と称されるカミンチュ(神人)がおり、イザイホーはもとより、島の公的な祭りや行事を司っている。また門中の行事やそのほかに携る多くのウクリガミ、さらには漁の神を司るソールイガナシなどの神人もおり、これらの神人によって、島の祭祀集団が形成されている。

 1 ミコ(ナンチュ・ヤジク・ウンサク・タムト)
  ナンチュ イザイホーにおける3日3晩のナナツヤーでのおこもりののち、彼女たちはイキー(兄弟)を守るオナリ神に生まれかわるのである。この時にオナリ神としての神名を授けられる。タマガエーノウプティシジと称している。シジ(霊力)のウプ(大)なる神名を受ける意味である。
  ヤジク(ハタガミ) 前回のイザイホーでナンチュをつとめ、3年目ごとに順次この階層に進んでいるが、次のイザイホーでハタガミとしての神役をつとめて、はじめてヤジクになったことを正式に認められる。ナンチュのハタ(周囲)をとりまく人の意。
  ウンサク(ユラレガミ) ウンサクは酒の義で、祭りや行事で御神酒を接待する役をつとめる。イザイホーの時の呼び名はユラレガミ。ウンサクからは、3年目ごとの昇進はなく、次のイザイホーでタムトとなる。
タムト(ユラレガミ) 神女たちの元老格。祭りや行事においては、これといった役割はなく、ノロ・根神・掟神のお伴をし、これを補佐する。70歳をもってテェーヤクとなり、すべての神役から解放され、引退する。ただし、この時すでにウクリ神となっている者は、さらに終身そのウクリ神としての神役をつとめる。

 <比嘉康雄氏は、祭祀集団をナンチュ(30歳~41歳)、ソージャク(40代前半)、シュリユリタ(40代後半~50代前半)、ウンサク(50代後半)、タムトゥ(60歳~70歳)の5階梯に分ける。シュリユリタからタムトゥまでをヤジクという、としている。>
 <並木宏衛氏は、ナンチュから年上の順にウットゥヤジク(ソージャク)になり、それをつとめ終るとシュリユリタになる、はじめてヤジクとして認められる、としている(『久高島の祭りと伝統』)>

 2 クニガミ(国神)
  ノロ  久高島における最高の司祭者で、外間ノロと久高ノロがおり、御嶽の祭りをはじめ、久高島の公的な祭祀を司る。世襲・終身の神人である。(この島は以前外間・久高の両部落に分かれていた。そのために2人のノロがいるのであるという)。ノロが祀る神々は、ニライウプヌシガナシー等々35神あるという。
両ノロは。久高島を開いた神、シラタルー・ファーガンシーの直系の子孫とされ、代々孫継ぎであったが、近年は嫁継ぎとなっている。
  ニッチュ(根人)
  《外間根人》男性の神人としてはもっとも重要であるが、現在はまだ生まれていない(注・神役を継ぐ者が出ることを「生まれる」といっている)。
根人は、島の公的な祭りや行事にはほとんど参加するが、なかでも、「男の祭り」といわれる、旧8月12日のティーダーガミの祭りは、外間根人が中心となる祭りであり、ソールイガナシの任命権も、両根人にあるという。世襲・終身で、原則として長男が継ぐ。
  《久高根人》 終身の神人であるが、世襲ではなく、ウプンシミー門中から選ばれる。 
  外間根人と久高根人は、神人としては上下の差はない。

  ニーガン(根神) イザイホーにおいて、ナンチュたちの神名を占定する。
  ウッチガミ(掟神) 両ノロ・根神の補佐をとつめる終身の神人。
                  グゥキマーイ、神酒を準備するナンチュ、カチャーシー舞い
              写真は、イザイホーのグゥキマーイ(『沖縄久高島のイザイホー』から)

 3 ニーブトリ
  クニガミにもウクリガミにも入らない。ニーブは柄杓といい、ニーブトリは祭りの時に神酒を造り、その神酒を神にさしあげる役である。

 4 ウクリ神 
  ウクリンゴ・ムンチュウガミ・シジノカミサマなどとも称する。
  島には多くのムンチュー(門中、注・男系の血縁組織)がある。門中にはそれぞれムトヤ(元屋・本家)がある。ウクリ神は、ほとんどの者が、この門中のムトヤから出るシジ(霊力)の高い巫女であって、主として門中の祭祀を司る。
ウクリ神で、島に住む者は、ナンチュ・ヤジク・ウンサク・タムトといったいずれかの階層にある時、何らかの神からの啓示によって生まれ、次第にシジを高めていく。
  ウクリ神はシジタカサンでなければなれないという点がもっとも重要である。

 5 ソールイガナシ 
  カベールの神、タティマンノワカグラーをまつる。漁の神。
  村頭をつとめたのち、還暦を迎えた者から年齢順に定められる。生涯に一度はこの神人をつとめることになる。
  (並木宏衛、鈴鹿千代乃著「神と神を祀る者」)。

  祭祀の対象
  クニガミは島の公的な祭祀を、ウクリ神は門中の祭祀を、ナンチュ以上の神女はオナリ神として各家の祭祀を司るというように、整理することができよう。
  以上、久高島の祭祀集団については、桜井満編『神の島の祭りイザイホー』から紹介した。

  久高島のノロ制度
  比嘉康雄氏は、久高島にノロ制度の導入されたことによって、島の祭祀が変容したことを『神々の原郷-久高島(上)』で次のように指摘している。
  久高島にノロ制度が導入されたのは4、500年前であたったと思われる。以前はムトゥ家レベルの祭祀がおこなわれ、その内容もおもに健康とお祓いに関するものであった。それがノロ制度導入(実施)後、シマレベルの祭祀がおこなわれるようになっていった。
  ノロが直接司祭するまつりは、麦と粟の穀物に関するまつり、フバワク(御嶽まわり)とイザイホーである。ここでいえることは人びとの健康に重点を置いたまつりに、生産に関するまつりが新たに加えられたということである。言いかえれば、ノロ制度は人びとの健康を願う制度でなく、穀物の生産向上を主目的にし、つまり麦、粟(穀物)の生産力を政治権力が利用するための制度であったと、久高島のノロ制度から推察することができる。しかし、実際は、土地が狭く生産性の低い久高島に対して首里王府も穀物の生産高にあまり期待せず、むしろ琉球開闢の地、五穀発祥の地ということで久高島を位置づけていたと思われる。

  イザイホーの始まりはいつからなのだろうか。『沖縄久高島のイザイホー』の湧上元雄著「イザイホー見聞録」では、次のように指摘している。
  「さて第一尚氏最後の国王尚徳(1469年即位)に殉じて縊死を遂げた大里祝女国笠(クニガサ、根神に貶されてクンチャサンニガンとも)の後を継いだ大西銘祝女(ウプンシミヌル、本祀本祝女=フンシフンウル=とも)のころにイザイホー祭祀は始まったと伝える。そこには悲劇のヒロイン国笠の轍を島人に踏ませぬという意図と、怨霊への鎮魂慰撫の願いがこめられていたのである」
  尚徳王については、久高島参詣に出向いた際に、外間家の美少女祝女クニチサヤに心を奪われた。寵愛して王府への帰還を忘れている間に、首里でクーデターが起こった。尚徳は、急いで首里に戻ろうとしたが、行き合わせた舟で王家の虐殺と金丸の即位を聞き、海に身を投げて死んだという伝承がある。
  ただ、このイザイホーの始まりについての伝承が、どの程度、史実を反映しているのかは、わからない。そういう言い伝えもあるということに紹介である。
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