レキオ島唄アッチャー

「『世ば稔れ』考」を読む、その2。豊年祭の歌謡

 八重山歌謡の中の「ユバ ナウレ/ユヤ ナウレ」 
 八重山の中でも「ユバ ナウレ」の句のよく用いられる黒島の豊年祭の歌謡で、その具体的な例をみてみよう。
黒島の豊年祭は、各村のチカサ(神女)は早朝からワン(御嶽)で、来る年の豊穣を祈願し、海上の他界から豊穣を招きよせるパーレー(爬龍舟競争)のウーニ(御舟=船頭)らの来訪を待つ。
 豊穣を他界から招来する人々の出発に際して謡われる歌の囃子として、舟を讃える「ピャンサー」という語と共に、「ユバ ナウレ」の句が各節で繰り返し歌われるのである。見事に祭儀の目的と一致した囃子だと言える。
                
 競漕の後、「今日が日」が謡われる。最後に「富貴の世は稔れ ハー 世は稔れ ハー 粟は稔れよ ハー 芋は実入れよ 稔れよ稔れ。実入れ実入れ」と一斉に囃し立てて謡い納める。ここで、「粟ヤ ナウレ」「ウンマー(芋)ミーリ」と穀物の名を具体的に挙げている。これは「世」(ユ)の実体が示されたものと考えて良いのではなかろうか。

 祭祀の行われる聖なる日に、豊穣を乞い願う歌を謡う。その祭祀の根底にあるテーマ、すなわち「豊穣の世を賜れ」という願意そのものが、皆人の合唱する囃子「ナバ ナウレ」であり、これは本歌詞と見事に照応したものであることが分かる。 プーリィ(豊年祭)の歌として八重山各地で謡われる次の歌も、その一つの典型である。
(「東かーら」を引用する。同類の歌が八重山各地に謡い伝えられている)
 本歌詞の後に、「ウヤキ世バ ナフレ」(富貴の豊穣は稔れ)という囃子句が規則正しく反復されるのである。これまた、五穀の豊穣を幻視し予祝する本歌のテーマの、繰り返しによる、こだまする訴えである。
 「ユバ ナウレ」という囃子の生成には、八重山の人びとの作物の豊穣に対する切実、いや、悲痛な願いが根底にあることが分かるだろう。

 波照間永吉氏は、「ユバナウレ」の句がよく用いられる豊年祭の歌謡を見ると、この句の持つ意味と役割がはっきりすることを、黒島の歌謡で例証している。「今日が日」では、今日の日、黄金の日をもとにして、来年の世、来る夏の世の豊穣を願うという本歌詞に続いて、穀物名も具体的に挙げて豊作願う囃子を繰り返す。その言葉が神に届き、実現するはずだと信じられた。豊年祭という祭儀の目的とそれを表現する本歌詞の内容と「ユバ ナウレ」の囃子が見事に一致していることが明確にされている。
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