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「親見世日記」を読む、刀を持ち出し喧嘩

「親見世日記」を読む、刀を持ち出し喧嘩

 琉球王府の時代に、那覇4町(西・東・若狭・泉崎)を管轄していた役所、親見世(おやみせ)の業務記録がある。『國立臺灣大學圖書館典藏琉球關係史料集成第一巻』の中に「乾隆元年親見世日記(1736年)」「乾隆4年親見世日記」(1739年)が収録されている。「乾隆元年日記」は正月2日から12月25日までの期間の記録である。その中から興味深い記事だけを紹介したい。

 最初に紹介するのは、刀を持ち出して喧嘩する事件である。
 4月1日付けの「覚」は次のように記している。
 若狭町村の高嶺筑登之親雲上(注・ちくどぅんぺーちん)と金城掟(注・うっち)親雲上が刀を持ちだして喧嘩したと金城掟親雲上の与中(注・くみじゅう。5人組)から報告があったので、すぐに問役(注・といやく。顔見世の下級役職)の髙良筑登之と仲里筑登之、同じく問役の湖城筑登之を、逮捕のため派遣したが、喧嘩はおさまったので、両人を尋問した内容を報告する。
一、高嶺筑登之親雲上が道端に萱草(注・かんぞう)を植え付けたので、このほど金城掟親雲上が取り除くようにと申し達したが承知しなかった。通行の邪魔となるため取り除くように高嶺へ申し入れた。本日、金城掟親雲上次男が萱草を取り除いたところ、高嶺が手つくみ(拳)で(金城次男を)突き倒したので、彼の親子(父、兄)の金城が現れ、高嶺の顔を石で殴りつけた。さらに金城親子も一緒になって高嶺を袋叩きにした。
一、右件が鎮まった後、高嶺筑登之親雲上が敵打ちに金城家に踏み入ったので、金城の子ども二人は隠れていたが、高嶺は金城の親と姉を打擲(注・ちょうちゃく。打ち叩く)した。このことを聞き及んだので、一大事だと考え兄の金城が刀を持ちだした。しかし、この一件で刀による怪我はなかった。
一、右の通り刀を持ちだして喧嘩に及んだことは一大事である。そこで刀は親見世が没収して、刀を持ちだした金城と高嶺は与中で監督するように命じた。
以上のことを報告する。以上。
4月1日 御物城の崎山親雲上   里主の小禄親雲上
<注・筑登之(ちくどぅん)は、琉球の身分制度のもとで、一般身分の士(サムレー)で主に下級官吏の役職に就いた。これに対し、里之主(さとぬし)は、大名(貴族にあたる)の按司(あじ)・親方(うぇーかた)系の士で要職に従事した。
             >IMG_6170.jpg
         「親見世」があった昔の那覇中心部の絵図(史跡案内板から)             
 琉球は、第二尚氏3代目の尚真王の時代に、中央集権制を強化し、地方に割拠していた按司(豪族)の武装を解除し、武器は王府が集中管理することにした。「サムレー」と呼ばれた士族たちも、日本の江戸時代の武士の様に、刀を腰に差して歩くことはなく、丸腰だった。中国から国王の認証のため来琉し長期に滞在した冊封使も「国内に、兵士のいるのをみたことがない」(汪楫=おうしゅう=著、原田禹雄訳注『冊封琉球史録』)と述べている。日常は武器を持ち歩くことがない社会だった。
 といっても、「親見世日記」には、刀を持ち出しての喧嘩騒ぎがあったというので驚いた。それも、道端に植えた萱草が邪魔だから取り除いたことをめぐっての争いである。腰に刀を差して歩く日本では、武士が百姓らの無礼があれば、切り捨て御免がまかり通ったと聞く。武士同士の争いでも、刀を手にすることは珍しいことではない。
 でも、日常、武器を持たない琉球では、刀を持ち出すような喧嘩は、異常事態だったのだろう。それにしても、刀はどこから持ち出したのだろうか。親雲上(ぺーちん)クラスの士族は、護衛用に自宅で刀を保持していたのだろうか。
 刀は没収され、当事者の両人は厳しい監督下に置かれることになった。
       
 事件の4か月後の8月24日に、刀は返却されることになった。「日記」は次のように記している。
一、今年の4月1日、若桜町の高嶺筑登之親雲上と金城筑登之親雲上が喧嘩した際に親見世が没収していた刀は、捜査が終わったならば持ち主へ返却するようにと、筆者(書記官)の賀手納筑登之親雲上を通じて平等之側(注・ひらのそば。首里王府の裁判機関である平等所の長官)糸数親雲上から連絡があったので、持ち主へ返却するように通達した。
一、右の刀は、持ち主の金城と与中(の代表者)を呼び出して、問役の仲里筑登之を通じて返却した。
 没収した刀の処理について、王府の裁判所にあたる平等所まで相談したらしく、同長官から刀は持ち主に返却するように通達があり、返却された。ということは、刀の所持そのものはお咎めなしということだ。
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