日本画で県展入選する腕前2018-08-19 Sun 11:01
5月に郷里の高知に帰省した際、かつて同じ職場で働いた元同僚の2人と50年ぶりに再会したことを書いた。そのうちの一人、F君は日本画を趣味としている。どのような絵を描いているのか知らないままだった。彼が自分の描いた日本画の写真を送ってきてくれた。とても素晴らしい日本画だと思うので、いくつかを紹介したい。
F君は、奥さんに言われて何か趣味をと考えていた矢先、日本画の大家、東山魁夷の絵を見て「これだ!」と思いたち、日本画の通信教育を2年間受けたという。50数年前、宿毛市の山奥の職場で働き、同じ寮で生活をしていた当時は、娯楽のない山奥の生活なので、よく仲間と一緒に酒を飲んだことだった。私の持っていたクラシック音楽などレコードを聴いたり、時に先輩の指導で写真の現像と焼き付けをしたことを思い出す。だが、絵を描くのが好きだという話は一度も聞いたことがなかった。だから、青春時代のF君からは想像できなかった。互に仕事を退職してから、年賀状の交換で、日本画を描いていることを知ったのはほんの数年前である。 ![]() 2016年高知県展入選の作品「追憶実りの秋」と作者のF君 F君は、いまでは、高知県美術展覧展で再三入選する腕前である。私は知らなかったけれども、働いている当時から絵を描くのは上手かったようだ。 送ってくれたカラー写真を見ても、日本画の繊細な表現、鮮やかな色彩、大胆な構図など入選するのも当然だと思われる。現物で見ればいっそう魅了される出来栄えだろうと思われる。 「追憶実りの秋」は、かつて田舎ではお米を刈り取った後の稲を脱穀する情景を描いている。F君の追憶の中での情景なのだろう。これは本来は画題にはなりにくいテーマだと思うけれど、見事に描き出されている。画を見ていると、かつての田舎の光景が蘇るようで懐かしい。 次の作品は「春の兆し」。春を迎える山林の風景が繊細な筆致と色彩豊かに描かれている。山と森林の四季折々の移り変わりと木々や草が芽吹き始める頃の美しさを知り抜いた人でなければ描けない絵ではないだろうか。2017年県展入選作品である。 ![]() 次は、2014年県展入選の「備え」と題する作品である。川に造られた堰堤と水門だと思う。山里で暮らすと川は身近にあり日常の風景である。でも、堰堤などは素人的には絵画の対象とは考えにくい。それは色彩は単調で、構図も面白みに欠けると思ってしまうから。でも、さすがに彼の絵は、落ち着いた色調で、どっしりとした存在感があり、川面に映る水門も鮮やかに描かれ、空の色合いも変化がある。入選もうなづける作品だと思う。 ![]() 次は2015年四万十市美術展で市長賞(特選)を受けた作品「清流仁淀と水門」である。F君は四万十市の出身であり、同市出身者は出品資格があるという。 この絵も清流にかかる水門を描いている。大胆な構図によるどっしりとした水門の存在感と鮮やかな朱色のゲートが対照的。深緑の水面の色彩やススキの繊細は描出など、さすが市長賞をいただいただけの出来栄えだと思う。 ![]() 次は、2016年四万十市美術展推薦作品「秋景 奥南川渓谷」。秋色に染まる林や渓谷の岩々、そこを流れる清流の色合いの微妙な表現など、渓谷の秋が見事に映し出されている。 ![]() 次は「静寂」という作品。大栃の国有林「さおりケ原」の冬の情景を描いている。積雪がまだかなれある森に出かけて、このような情景を見ることは、情熱がなければできないことである。表題の通り、どこまでも広がる静寂を感じさせる。かつて私も大栃でも働いたことがあり、F君から場所を聞くと、一度は行ったことがあるはずである。でもこのような情景は見た記憶がない。 ![]() 秋は美術展のシーズン。F君も県展に向けて準備中のようだ。これからも、F君ならではの視点の日本絵を見たいものである。 スポンサーサイト
|
郷土愛にあふれた「おくふじ新聞」2018-08-16 Thu 23:04
5月に郷里の高知に帰った際、かつて宿毛市で働いていた当時の同僚と、50年ぶりに再会したことをこのブログでも書いた。
その際、友人の一人、K君が手作り新聞を発行していること、K君からこれまでに発行した新聞をいただいたことを紹介した。 沖縄に帰ってきてから、改めて宿毛時代のことを何か書いて投稿してほしいという要望を受けた。宿毛周辺には、1962年から69年まで7年間いたことになる。宿毛市といっても、市街地から20数キロも奥に入った楠山・笹山という地域で5年間も働いていた。その思い出を、いくつかのエピソードを交えて書いて投稿した。K君から、投稿は数回に分けて掲載したい。その前に帰郷の想い出を書いた文章(ブログアップ済み)から、3人で再会した部分を掲載したいとのことだった。勿論、了解した。 ![]() 「おくふじ新聞」を発行するK君 先日、さっそく掲載紙を郵送してきてくれた。それで改めて、K君が発行する手作り新聞のことを紹介しておきたい。 K君は、奥さんと二人で、宿毛市の山奥にある郷里の地名を付けた手作りの「おくふじ新聞」の発行を始めた。奥さんは不幸にも病気で10年ほど前に急逝したという。その後も毎月発行を持続して、2018年8月5日で128号を数える。発行人として、自分の名前と奥さんの名前を記し、夫婦の共同の作業として発行を継続しているところに、新聞にかける強い情熱と亡き奥さんへの深い愛情が込められている。 ![]() 新聞は、郷里の出身者をはじめ郷里に住んでいた人やなんらかの関わりのあった人など90人ほどに送っているという。A4伴カラー刷りで、レイアウトもとても工夫されて読みやすい。多いのは郷里にまつわるニュースや想い出のエッセイ、郷里にゆかりの人たちの話題や動向、季節の花々や果物、野菜の話題、郷土の歴史、ユーモアあふれる小話、人生訓、俳句など文芸まで掲載されている。彼は自身も俳句を詠むそうだ。とにかく紙面の隅々に郷土愛が溢れている。 きっとこの新聞を読んでいる人たちは、郷里にかかわることがよくわかる何よりの情報源であるし、紙面を通して郷里への思いを共有しているのだろう。紙面を読めば、新聞発行にかけるK君の努力とその紙面を待っている読者の期待を感じることができる。 ![]() 私の帰省の想い出は、3人が再会し、お酒を酌み交わした写真付きで2面のトップに掲載していただいている。3人の写真を見ていると、50年ぶりに会った楽しいひと時が甦る。さらに、紙面全体を通して、50数年前の青春時代を過ごした場所に想い出を運んでくれる。その当時、一緒に働き、過ごした人たちもすっかりもうお年をめしている。みなさんの健康と長寿、幸多きことを願わずにはいられない。 |
| ホーム |
|